気ままに楽しむ アコースティックギター製作  

ベース音押弦ユニット(bass note presser)改良版

半年かけてベース音押弦ユニット(ベースノートプレッサー)の改良を行ってきました。
今回はその改良版の紹介になります。
まず、下の写真が改良版の全体の写真になります。


改良点は大きく以下の3項目になります。
①操作ノイズの低減
②操作力の低減
③演奏性の向上

簡単に説明していきます。
①操作ノイズの低減
操作中のノイズについてなのですが、この中にも2種類あります。
一つは押弦部がフレット間を移動するときに発生する弦のビビり音で、もう一つはリニアガイド部から発生するノイズです。
弦のビビり音については弦を押さえる部分の形状を樹脂ブロックから下の写真の様にゴムローラに変更することで改善できました。簡単に書きましたがそこに至るまでに色々試しました。ビビりなく弦を押さえられる人の指は、骨の硬さや皮膚の柔らかさが絶妙にできているものだと再認識しました。

もう一つのノイズ、リニアガイド部からのノイズについてです。
リニアガイドとはテーブル(一般的にスライダと言う)がレールに沿って軽く移動できるようにした機械要素部品です。スライダとレールの間にボールを挟み転がすことで軽く動くようにしており、そのボールがスライダの中を循環することでスライダは距離の制限無く移動することができます。これに押弦部や操作部を載せることでそれぞれがレールに沿って軽く動くようにしています。
改善前はリニアガイドの中でも安価な海外製のものを使っていましたが、移動時にリニアガイドから発生するノイズがギターのボディで拡大され許容できるものではありませんでした。そこでボディ側に音が伝わらないように色々な部分に制振材や防振ゴムを挟んでみたりしましたが、思ったほどの効果は得られませんでした。
そしてリニアガイドの老舗であるTHK社のボールリテーナ付きのリニアガイドを試したところ、かなり改善することができました。ボールリテーナとはボール同士が擦れないようボールとボールの間に樹脂を挟んだものです。この小さなリニアガイドでボールリテーナ付きを製造できるのは世界中で日本のTHK社だけです。流石です。価格も高価ですが。

ノイズはかなり低減できましたが無くなったわけではなく、もう少し押さえたいところではあります。かなり難しいことのように感じていますが今後の開発テーマとします。

②操作力の低減
上記のとおりボールリテーナ付きリニアガイドを使用することでノイズは大分低減できました。しかし、その反面良くないことがあります。スライダの摺動抵抗が大きいのです。初めに使っていた総ボールタイプと呼ばれるリニアガイドは摺動抵抗は無視できるレベルで軽く動かせたのに対し、こちらは無視できないレベルです。
そのため、全体の操作力をできるだけ低減するために押弦部の構造を滑りブロック方式から転がりのゴムローラ方式に変更しました。それと、押弦する弦の本数が多いほど大きな操作力が必要になるため、押弦するのを4弦、5弦、6弦の3本から5弦、6弦の2本にしました。
また、リニアガイドにフッ素系の潤滑剤を塗布することでさらに低減することが分かりました。
これらにより全体の操作力をなんとか許容できるレベルまで低減することができました。

③演奏性改善
リニアガイドはスライダを3個使用しています。真ん中のスライダは押弦ユニットが取り付きます。改善前はその両側(ヘッド側とボディ側)の2個スライダに操作棒を連結していました。そのため、ボディ側のスライダと操作棒の連結部分が演奏の邪魔になっていました。それを改善するためにボディ側のスライダと操作棒との連結は無くしヘッド側のスライダのみの連結にしました。押弦ユニットよりボディ側は演奏に邪魔になるものが無くなりました。例えば下の写真の様に押弦ユニットをゼロフレットにすれば、概ね通常のギター演奏が可能です。

ちなみに下の写真は限界の10フレットに移動したときの状態です。

操作棒をヘッド側のスライダ1個に連結するだけでは、操作棒がぐらついてしまいます。そこで操作棒をスロットレール構造とし、ネック側でガイドするように対策しています。
下の写真は操作棒を取り外した状態です。ネック側の面にスロットがあります。さらにネックとの摩擦抵抗を減らすためフッ素樹脂を貼り付けています。

ネック側にはスロットに入るガイド部材をねじ止めします。写真ではネック側にもフッ素樹脂を貼り付けていますが、貼り付けなくても問題無いと思います。

そして操作棒の操作面はクッションゴムを貼り付けています。改善前は波上の部材を固定していましたが、この改善により操作棒の何処を親指で押さえてもよいため瞬時にポジション変更が可能で、ゴムの摩擦や変形により親指の操作力も伝えやすくなりました。
その他細かい部分の改善を色々行っており演奏性は大分改善されました。

以上、ベースノートプレッサ改良版の紹介でした。
今後はこのベースノートプレッサの良さや実際のところを動画等も使いながら紹介していければと思っています。