気ままに楽しむ アコースティックギター製作  

ベースノートプレッサーとは

ベースノートプレッサーとは何かを説明したいと思います。
音楽ジャンルの中にソロギターとかフィンガースタイルギターと言われるジャンルがあります。ギターを独奏するジャンルです。私のギター作りもそういったジャンル向けのギターを作りたいというところから始まりました。
ソロギターの音楽を聴かれる方も演奏されるかたもおられると思います。そこでお聞きします。
ソロギター音楽を聴いていて、または演奏していて、ベース音がプツッと途切れてしまう、もう少し音を伸ばせないものか、と思われた方はいないでしょうか?または、高音寄りのメロディ部ではベース音も高めになり全体的に高音寄りの音楽になってしまう、もっと低い音も出せたら良いのに、と思われた方はいないでしょうか?
そのようなところを解決しようとして作ったのがベースノートプレッサーです。

通常のギターであればベース音とメロディを同時に弾く方法としては、右手の指でタップするなどの特殊な奏法を除くと、一つはベース音に開放弦を使う、もう一つは左手の5本の指のどれかでベース音を押さえながら残りの指でメロディを弾く、という二つの方法があると思います。ベース音に開放弦を使うのは弦の本数が限られ音程の自由度に制約があります。ベース音を押さえながら残りの指でメロディも弾こうとすると手の構造の制約で指で押弦できる範囲の音しか弾くことができません。これらの制約によりソロギターの音楽が上記の印象になってくるのかと思います。

ベースノートプレッサーの構造を説明します。
まず、ネックの指板側には低音弦を押さえる押弦部があります。この押弦部はバネの力で絶えず弦を押さえています。

さらにこの押弦部はリニアガイドというガイド部品によってネックに沿って移動することができます。押弦部が移動しやすいように弦を押しつける部品にはゴムローラを採用しています。例えば押弦部をナットと1Fの間に移動させれば1Fを押さえた状態になります。

次にネックの裏側の低音弦側にはネックに沿わせた操作棒があり、この操作棒が機構的に押弦部と連結しています。この操作棒を左手の親指で左右にスライドさせることで押弦部も移動します。操作棒の親指が触れる部分は柔らかいゴムが貼り付けられていて親指の力を伝えやすくなっています。

押弦部は移動範囲はナットから10フレット付近まで移動できます。押弦部がナットにある時は開放弦の音が出せますので、通常のギターと同様の演奏が可能です。同じく押弦部がナットにある時に操作棒の先端は11フレットくらいまで伸びています。

以上から左手がハイポジション側にあっても低音弦はローポジションの音を選択して押さえることができます。よって下の写真の様に左手の人差し指から小指までの4本の指でハイポジションでメロディを弾きながら左手の親指でローポジションでベース音を弾くようなことが可能になります。この時、ベース音は押弦したまま保持されているので音を伸ばすこともできます。押弦する指4本がベース音を押さえることから解放されるためメロディを弾く運指の自由度も増します。また、通常では押さえることができないようなコードを押さえることも可能になります。

ベースノートプレッサーで重要な機能として、親指で操作棒を動かして押弦部を移動させるときに、操作棒の移動量に対して押弦部が2倍移動するような拡大機構が付いています。親指は幸いにも関節と筋肉が操作棒を左右に移動させるのに都合の良い構造になっています。しかし、親指を左右に振れる量は限度があり多くても80mmくらいかと思います。これはローポジションで3フレット分の距離に相当します。親指の操作棒の一回の操作(ワンモーション)で3フレット分しか動かないのでは演奏への制約が大きい為、一回の操作で2倍の6フレットまで移動できるようになっています。これによりどの音階へも殆ど一回の操作で移動できるようになります。写真の赤のリボンがあるところが拡大機構です。

ベースノートプレッサーの演奏性について説明します。
ベースノートプレッサーの演奏には慣れが必要だと思います。指で押弦するときと同じですが押弦するポイントをある程度フレットに近づけないとビビり音が出ます。押弦部の位置を視界の中に入れながら演奏すると意外と簡単に位置決めできると思います。
また、押弦部を移動させるには親指の力がある程度必要です。これはノイズ対策で特殊なLMガイドを使用していることによるところが大きいです。また、操作棒に親指で左右に力を入れる時は指板側の指の少なくとも1本は押弦するか、人差し指の付け根でネックを挟むようにする必要があります。ネックを前後で挟み込むようにしないと操作棒に力が入らないからです。このため速いパッセージでベース音を弾くことは難しいと思われます。逆に親指を操作棒から離しても押弦部の位置が簡単にずれてしまう様なことはありません。
また、ベースノートプレッサは複数の弦(2本や3本)を同時に押弦するため、音を出したくない弦はしっかりミュートする必要があります。
以上の様なことから通常のギターとは別物の楽器としてとらえて演奏することになると思います。
最後に、ベースノートプレッサーはこれまでのギターという楽器に満足されている方には必要無い物かと思いますが、ギター演奏の音楽性を広げたいと思われる方にはとても面白い物になるだろうと思います。